三春法律事務所 MIHARU LAW OFFICE

2020.11.8

ブログ, 資格試験

vol.16 社会人のための資格勉強法

概要

 社会人になってからもキャリアアップや転職のために何か資格を取ろうということで勉強したいという方もおられると思います。今回はそういった資格勉強をしようとしている人や,現在している人向けにお話したいと思います。
 ちなみに,私の資格勉強経験ですが,残念ながら働きながら資格を取得したという経験はありません。なので,社会人のための資格勉強について話す資格はないと言われるかもしれません…。
 過去の体験としては,司法試験の合格経験(私が合格した平成14年度の司法試験は,受験者41,459人,合格者数1,183人,合格率2.85%でした),簿記2級の合格経験があります。それらの経験及び法科大学院における非常勤講師経験をもとに話していきたいと思います。
 概要次のような話をしたいと思います。

目次

  • 1 社会人が資格試験を受験することの良い点
  • 2 社会人が資格試験を受験する場合の壁
  • 3 資格試験についての考え方
  • 4 試験に向かう姿勢のポイント
  • 5 独学か,予備校やスクールに通うか
  • 6 まとめ

1 社会人が資格試験を受験することの良い点

 まず社会人が資格試験を受験することについて,私が良いと思う点について簡単に説明します。
 それは目標が明確である点です。
 社会人になって,惰性で生きていくのではなく自分の能力を向上させていきたい,仕事で社会に貢献したい,などと思う場合に,目標を設定することはそれほど簡単ではありません。時間管理の技術を身につけるのだ!と意気込んでも,具体的な目標にするのは難しく,達成したかどうかをはかるすべもないというのが実際のところです。
 学生のころは比較的目標がわかりやすかったですよね。高校受験や大学受験があれば合格という目標があり,小さいステップでは中間試験,期末試験という目標があります。部活であれば,この大会でベスト8を目指す,とか,設定タイムを超えるとか,一目でわかる目標を設定することが可能でした。
 目標がないと,なかなか努力はできません。
 この点,資格試験は合格という目標が明確です。はっきりその一点に注力することができるので,自分を高めたいという人には一定の羅針盤のようなものになります。
 この目標に向かって努力していくプロセス自体が,自己の能力向上になるので,資格試験を受けることは選択肢としては大いにあり得るところです。実際に資格がキャリアアップにつながる場合も多いでしょう。
 資格だけとっても意味がないよ,という論もありますし,切り取り方としては真実の面もありますが,その点には今回は深入りしません。少なくとも何もしないよりは成長できると思いますので。

2 社会人が資格試験を受験する場合の壁

 社会人が資格試験を受験しようとする場合,大きな壁となるのが,学習に充てる時間がない,という点かと思います。
 うまく時間がとれないことに相まって,もう無理だな,と途中で挫折してしまいがちになります。
 したがって,時間がない中で合格という目標を達成するためには,いかに効率的に試験勉強を行うか,ということがポイントになります。
 そのポイントを考えるための考え方について以下に整理したいと思います。

3 資格試験についての考え方

 資格試験の勉強をスタートさせる場合,まず,達成しなければならない目標を具体的に明確にすることが最初にやるべきことになります。
 資格試験の勉強の話なんだから,資格試験に合格することが目標に決まっているだろうと思う方もいるかもしれません。全くそのとおりです。しかし,資格試験の合格ということをより具体的にする必要があります。このことは意外なほどできていない場合もあります。

 資格試験の合格をより具体的にするというのはどういうことか。
 それは,その資格試験について,試験はいつ実施されていて,どういった試験科目があり,その科目について何点を獲得すれば合格するのか,試験の時間は何分なのかなどということを最初に具体化しておくことです。まず敵を知るのがスタートです。結構これをしないで勉強はじめてしまう人がいますが,圧倒的に非効率になってしまいます。

 例えば,私もとったことのある簿記2級を例としましょう。
 簿記2級の試験は,試験時間は2時間で,試験科目は商業簿記と工業簿記があります。全部で100点満点で商業簿記が60点,工業簿記が40点の配分になっています。合格点は70点で,点数を上回れば合格し,人数は関係ありません。
 この程度のことはちょっと調べればわかります(今はGoogle先生に聞けば一発です)が,勉強を始める段階で調べない人は結構いると思います。試験日が近くなってからこれらを確認する,という人もおられると思います。これだと時間がない中では非効率的になります。

 調べた結果からすると,簿記2級の試験は100点満点中70点とればいいわけで,100点をとるための勉強をする必要はないわけです。TOEICのような点数を何点とるかという試験だと別ですが,通常の資格試験の場合,合格すればいいわけで,合格に必要な点数以上をとる必要はないということになります。

 極端な話ですが,簿記の例でいくと,商業簿記が60点満点,工業簿記が40点満点,合計で70点とればいいので,商業簿記を満点とって,工業簿記は10点でいい,というようなことも場合によっては可能です。実際に私は,試験日までに工業簿記が全然間に合わなかったので,それに近い感じで合格できたということもありました。

 話はそれましたが,試験の内容を具体的に調べて合格ラインがわかったら,合格ラインに必要な知識に絞って,勉強のリソースを割くことになります。
 社会人の場合は時間がないでしょうから,なおさらこういう戦略を最初に考えておくというのは大事です。

4 試験に向かう姿勢のポイント

 法科大学院において非常勤講師をしていた際に,学生によく話をしていた内容になります。
 まず一つ質問をしてみます。

 試験の合否って何によって判断されると思いますか。

 あまりひねりのない答えで申し訳ないのですが,合否は受験生が書いた答案で判断される,というのが答えです。
 何をいいたいかというと,その人が,たとえ実際にどれほどの知識をもっていたとしても,それをきちんと答案にアウトプットできないと,一切評価されないのです。つまり,努力や実際に持っている知識量が評価されるわけではない。この点が資格試験のつらいところであり,かつポイントです。
 よって,試験勉強においては知識を得ることも重要なのですが,これを試験の出題の仕方にあわせてアウトプットするための訓練というものをしなければならないということです。具体的にいえば,出題形式に合わせた問題に対してアウトプットするために,出題される問題を念頭において勉強する,という感じですね。

 わかりやすくするために,ちょっと単純化します。例えば受験生が100の知識をもっているとします。
 しかし,この知識を問題に合わせてアウトプットできる力が50%だとすると,採点する側からは,この人は,50の力をもった人だ,と判断されてしまいます。
 他方で,70の知識しか持っていない受験生が,100%アウトプットする力をもっていると,採点する側からは,その人は70の力をもった人だと判断されるわけです。
 仮に合格ラインが60だとすると,100の知識をもった人が不合格になって,70の知識しかない人が合格するということになります。

 したがって,このアウトプットするための力の訓練に時間を割くことが重要であると思います。知識量を50から100にするよりも,表現する力を50%から100%に上げる方が時間がかからないし,いろんなことに応用が利くので,これを個人的にはお勧めしています。

5 独学か,予備校やスクールに通うか

 これも社会人が資格試験をとろうと思う際に問題になります。個人的には本気でやるつもりがあり,かつ短期間で合格しようと思うなら,スクールにいった方がいいと思います。
 理由は3つあります。

①情報を調べる手間が小さくなる

 まず一つ目は,予備校やスクールはプロなので,先ほどの試験の内容とか,必要とされるレベルなどの情報を有しており,これを自分で調べる手間が省けるという点です。
 もちろん鵜呑みにすればいいということではなく,自分で研究する必要もありますが,0から行うよりはかなりハードルが下がります。

②ペースメーカーとなる

 二つ目は,勉強のペースメーカーになるという点です。社会人が資格をとろうとする場合に一番のハードルになるのは,どうやって勉強を習慣化して,ペースメイクするかというところです。独学だと自分次第感が強くなるので,挫折の可能性はあがると思います。スクール等は試験に合わせてカリキュラムを組んでいると思うので,それに従っておけばOKということになり,余計なリソースを使わずに済みます。
 なお,これも鵜呑みにすればいいということではなく,自分でカスタマイズすることも重要にはなります。

③モチベーションの維持に有用である

 三つ目は,モチベーションを維持しやすいという点が挙げられます。スクールに通う場合,通常少なくない金額が必要になる場合が多いので,それを払ったからには合格しないとしゃれにならん,と自分を追い込むことができます。対価を先払いするイメージです。
 他には,通学型であれば,同じ目標に向かう仲間も見つかるかもしれません。試験では切磋琢磨する仲間の存在はかなり重要な要素なので,この意味でもモチベーション維持につながると思います。

スクール不要論について

 教材やスクールについて,提供されている情報は無料もしくは書籍で十分手に入る。金額はぼったくりだ,などの批判はよく聞くところです。一面では真実の部分もあるとは思います。しかし,私は今述べたようなメリットがスクール等の価値だと思っているので,その意味では次元が違う話であり,あまり適切な批判とはいえないという評価もできると思っています。

 したがって,予算が許せば対価を払ってスクールに行った方が合格しやすいかなと思います。もちろんメリットとしてあげた部分を自分で管理できる場合には独学も十分選択肢には入ると思いますので,独学が悪いというわけではありません。ご自分の状況に合わせて判断したらよいと思います。

6 まとめ

 以上のとおり,社会人が資格試験を受験することについてまとめました。一番言いたいことは,試験においてどうやって評価されるためのアウトプットをするか,という観点を持ってもらいたいということです。
 少しでも参考になれば幸いです。