三春法律事務所 MIHARU LAW OFFICE

2024.5.11

お知らせ, 交通事故トピックス

vol.21 【自動車保険シリーズ】弁護士費用担保特約はつけておくべきか?

概要

 今回は,自動車保険シリーズとして,弁護士費用担保特約はつけておくべきかということについて書いていきたいと思います。
 結論から申し上げますと,「つけておくべき」ということになりますが,なぜそうなるのかを解説していきたいと思います。
 本日の目次は次のとおりです。
1 弁護士費用特約とは何か
2 どんなときに利用できるのか
3 弁護士費用特約のメリット
4 弁護士費用特約のデメリット
5 弁護士の選び方
6 結論

1 弁護士費用担保特約とは何か

 自動車を所有している方は,任意保険に加入していると思いますが(加入していない人は必ず加入してください),その特約の一つとして弁護士費用担保特約があります。
 保険約款には,だいたいこんな感じで書かれています(以下は損害保険ジャパン株式会社の個人用自動車保険の約款です)。
 「当会社は,この事項により,保険金請求者が賠償義務者に対し被害事故にかかわる法律上の損害賠償請求を行う場合に,保険金請求権者が被害事故弁護士費用等を負担することによって被る損害に対して,被害事故弁護士費用保険金を支払います。」

 …… 
 はい。何を言っているかわからないですね。
 ごく簡単にいうと,交通事故で被害(車の損傷や怪我)を受けた場合に,自分が相手方に賠償請求をしようとする際に弁護士を利用する費用が保険金で補填される,というものです。

2 どんなときに利用できるのか

概要

 上記で説明したとおり,自分の損害について相手方に請求するときに利用できるということになります。
 つまり,交通事故に遭って,自分が損害を受けた(怪我をした,車が壊れた)場合に,その賠償を事故の相手方に請求したいという場合に,弁護士に対して法律相談をしたり,その請求を弁護士に依頼する場合の弁護士費用が保険で支払われるようにできるということです。
 限度額は概ね300万円となっている場合が多いと思いますが,そこまでの金額に及ぶのはよほど被害金額が大きい場合に限られますので自己負担はほぼないと思ってもよいかと思います。

具体的な利用画面

 では,具体的にどのような場面で利用が考えられるでしょうか。
 いろいろな利用場面が考えられますが,代表的な状況についてご紹介いたします。

自分の過失がゼロであると考えているとき

 交通事故の場合,双方に過失があるという場合が多いといえますが,自分は悪くないと確信しているのに相手方からこちらにも過失があると主張される場合があります。
 自動車保険には示談代行サービスがついていますが,これは基本的には自分が支払う立場になった際の示談代行をしてくれるという内容になりますので,自分に過失がないと主張する場合には,相手方(及び相手方保険会社)との交渉を自分の保険会社に任せることはできません。自分で交渉を行う必要があります。
 そんなときに,自分では相手方の保険会社と交渉したりするのに必要な知識もないし,ストレスだからそもそも直接対応したくない,というような場合は弁護士費用担保特約を使って弁護士に委任する,ということができます。

過失割合について納得ができないとき

 自分にも過失があることはわかっていて,保険会社に交渉を任せているけれども,その結果が納得できない,という場合にも,弁護士費用担保特約を利用して,弁護士に交渉を任せることが可能です。
 場合によっては訴訟まで行って過失割合を決めていく場合もあります。

相手の保険会社とのやりとりが負担に思うとき

 怪我に関する賠償の場合が多いですが,治療終了後に相手の保険会社から提示される示談金の額に不満がある場合や,妥当かどうかわからない,というときに,弁護士に交渉や裁判を依頼するという場合があります。

自分や家族が歩行中,自転車走行中などに事故にあった場合

 若干番外編になりますが,一番見落としがちなシチュエーションかもしれません。
 保険の約款をよく確認する必要がありますが,自分や家族(同居の親族,別居の未婚の子とされている例が多い)が,受傷した際,保険をかけている自動車に乗っておらず,自転車で走行していたり,歩行していたりした際にも弁護士費用担保特約が利用できる場合があります。
 家族が事故にあった場合には,使える保険がないかはよく調べて頂くことをお勧めいたします。

3 弁護士費用特約のメリット

①費用を気にせずに弁護士に依頼できる

 上記のとおり交通事故では弁護士に相談したり依頼をしたりするシチュエーションは多いため,費用を気にせずに利用できるのは大きなメリットになります。

②弁護士を紹介してもらえる

 どの弁護士を選ぶかは自由です。ですから自分が知っていたり,自分が探した弁護士に依頼することができ,その弁護士費用は保険金で支払うことができます(ただし弁護士費用担保特約による弁護士費用は各保険会社の基準にしたがって支払われるので,各弁護士の報酬設定によっては自己負担が必要になる場合があります)。
他方で,自分に弁護士のあてがなかったり,自分で探すのも難しいという場合には,保険会社に紹介をしてもらうということが可能です。

③利用しても等級に変動がない

 自動車保険に関しては,車両保険,対物賠償保険,対人賠償保険など,利用すれば,等級がダウンとなり,次の契約更新時の保険料が増額になるものが多いですが,一般的に弁護士費用担保特約については等級に変動はありません。この点は大きなメリットになります。

4 弁護士費用担保特約のデメリット

 デメリットとしては,保険に特約を付帯する形になるので支払う保険金が増えるという面です。逆にいえばそれ以外にデメリットはないといってよいでしょう。
弁護士費用担保特約の保険料は比較的安価であると思いますので,実際に弁護士を依頼する必要が出てきた際に弁護士費用の負担なく弁護士に依頼できるという価値からすると,メリットの方が上回るのではないかと考えます。

5 弁護士はどうやって選べばいいか

 弁護士の選び方については,こちらから始まるシリーズにて説明をしておりますのでご参照ください。
 これに加え,保険会社に紹介してもらうという手段が加わることになります。保険会社の紹介する弁護士は交通事故の事件を多く取り扱っていることが多いので,自分で探す暇がないという場合には頼んで見るのもよいと思います。

6 まとめ

 以上のとおり,弁護士費用担保特約にはひとたび事故が起きれば利用可能な場面がかなりあり(しかも,車に乗っていないときの事故でも,家族の事故でも利用可能な場合がある),デメリットに比してメリットがかなり多い保険であると思われます。
 自動車を保有している方は皆任意保険には加入していると思いますが,弁護士費用担保特約に未加入の場合には,加入を検討してみてはいかがでしょうか。(別に保険会社の回し者でもなんでもないですが(笑),弁護士の立場からはお勧めできる保険かと思います。)